以前の記事で、eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)を積立で買い始めた話を書きました。しかし証券口座を開いて商品を選ぶ画面を見ていると、必ずと言っていいほど比較対象として出てくるのが「S&P500」です。「結局どっちがいいの?」という疑問は、投資を始めた人なら一度はぶつかる壁だと思います。今回は、この2つの違いを徹底的に整理してみます。
そもそもの違い:何に投資しているのか
S&P500とは
S&P500は、米国を代表する約500社の株価をもとに算出される株価指数です。この指数に連動する投資信託(eMAXIS Slim米国株式(S&P500)など)を買うと、Apple、Microsoft、Amazon、Googleといった米国の巨大企業にまとめて投資していることになります。米国経済の動向をダイレクトに反映しやすい構造です。
全世界株式(オルカン)とは
一方の全世界株式(通称「オルカン」、eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)など)は、日本を含む先進国・新興国、約50カ国、数千銘柄に分散投資するタイプの投資信託です。「世界経済全体の成長に賭ける」というコンセプトで、究極の分散投資とも言われます。
「オルカンだけで分散できている」は本当か
ここが調べていて一番驚いたポイントでした。「全世界株式」という名前から、世界中に均等に分散されているようなイメージを持っていましたが、実際にはオルカンの構成比率のうち約60〜63%が米国株です。つまり、オルカンを買っている時点で、すでに資産の半分以上が米国に集中しているということになります。
これを知ると、「S&P500とオルカンを両方買えば分散になる」と考えるのは早合点だと分かります。両方買っても、結局は米国への集中度がさらに高まるだけで、狙った分散効果はほとんど得られません。分散を重視するなら、オルカン単体で十分に世界分散されている(米国の比重は大きいものの)という理解の方が実態に近いです。
信託報酬(コスト)の比較
以前「投資信託の信託報酬ってなに?」という記事で、コストの重要性について書きました。この観点でも比較してみます。
- eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー):信託報酬 年率0.05775%以内
- eMAXIS Slim米国株式(S&P500):信託報酬 年率0.08140%以内
どちらも業界最低水準を争うレベルの低コストファンドで、一般的なインデックスファンドの平均(0.2%台)と比べると圧倒的に安いです。オルカンの方がわずかに低いものの、その差は0.02%台とごくわずかで、このコスト差だけを理由に選ぶ必要はなさそうです。信託報酬の考え方についてもっと詳しく知りたい方は、以前の記事もあわせてご覧ください。
【関連記事】投資信託の信託報酬ってなに?調べてみた (投資信託の信託報酬ってなに?調べてみた)
過去のパフォーマンスを比較する
設定来のリターンで見ると、多くの比較記事で「S&P500がオルカンをやや上回るパフォーマンスを示してきた」と紹介されています。これは近年、米国のテック企業を中心とした成長が世界経済を牽引してきたことが背景にあるとされています。
ただし、これはあくまで過去の実績であり、将来も同じ傾向が続くとは限りません。市場のトレンドは時代によって変わるものなので、「過去のリターンが高かったから、これからも高いはず」と単純に考えるのは危険だと感じています。実際、比較記事の多くも「期間によってパフォーマンスの優劣は入れ替わる」と注意を促していました。
リスクの違いを整理する
集中投資と分散投資というリスクの取り方
S&P500は米国という一つの国(ただし世界的な超大企業が中心)に集中投資する形になるため、米国経済に何か大きな問題が起きた場合、その影響をダイレクトに受けます。一方でオルカンは、米国以外の国・地域にも分散されているため、理論上はその分リスクが平準化されます。
とはいえ、前述の通りオルカンも米国比率が60%超と高いため、「オルカンなら米国リスクとは無縁」というわけでもない点は押さえておく必要があります。
為替リスクはどちらにもある
見落としがちですが、S&P500・オルカンのどちらも、実質的には外貨建て資産に投資していることになるため、為替の影響を受けます。以前「円安・円高が自分の資産にどう影響するか」という記事で書いた通り、円安が進めば円換算の評価額は増え、円高が進めば減ります。これはS&P500に集中しても、オルカンで分散しても、程度の差こそあれ避けられないリスクです。
どちらが向いているか、タイプ別に考える
色々調べてみて、「どちらが正解」という単純な話ではなく、自分の投資スタンスやリスク許容度によって向き不向きが分かれる、というのが結論のようです。以前「リスク許容度を考えて、資産配分を見直した話」でも書きましたが、この視点は今回の選択にもそのまま当てはまります。
【関連記事】リスク許容度を考えて、資産配分を見直した話 (リスク許容度を考えて、資産配分を見直した話)
米国の成長に賭けたい人向け:S&P500
- これまでの実績を踏まえて、米国の力強い成長に期待したい人
- 分散よりも、実績のある集中投資でリターンを狙いたい人
手間なく世界全体に分散したい人向け:オルカン
- 「どの国が伸びるか」を予測せず、世界経済全体の成長に乗りたい人
- 一つの商品で完結させたい、シンプルに運用したい人
両方を組み合わせるという選択肢
どちらか一方に決めきれない場合、両方を組み合わせるという方法もあります。ただし前述の通り、これは「分散効果を狙って」というよりは、「気持ちの上でバランスを取りたい」という意味合いの方が強いと理解しておいた方が良さそうです。
自分がどうしているか
色々調べた結果、自分は今のところ、以前から積み立てているオルカンをメインに継続することにしました。理由は、
- 一つの商品で世界全体をカバーできるシンプルさが、自分の運用スタイルに合っている
- 「どの国が伸びるか」を自分で予測・判断する自信がまだない
- 結果的に米国比率が高いとはいえ、それ以外の国にも分散されている安心感がある
ボーナス時の一括投資では、気分転換も兼ねてS&P500に振り分けることもありますが、基本の積立はオルカン一本、というのが今のスタンスです。
まとめ
S&P500とオルカン、どちらも低コストで長期投資に適した優れたインデックスファンドであることは間違いありません。「どちらが優れているか」ではなく、「自分がどんな投資スタンスを取りたいか」で選ぶのが、後悔しない選び方だと今回調べてみて実感しました。
- 米国の成長に集中して賭けたいなら:S&P500
- 世界全体に分散して、シンプルに運用したいなら:オルカン
- 米国比率の高さを理解した上で選ぶことが、どちらを選ぶにしても大切
まだ決めきれていない人は、まず自分がどちらのタイプに近いか、リスク許容度の記事も参考にしながら考えてみることをおすすめします。
次回は、また節約か制度の話に戻って書いてみようと思います。
※本記事は各インデックスファンドの一般的な特徴を整理したものであり、特定の商品や投資手法を推奨するものではありません。信託報酬・構成比率・過去のパフォーマンスは執筆時点の情報に基づいており、今後変更される可能性があります。投資判断は必ずご自身の責任で、最新の目論見書等をご確認の上行ってください。


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